更新日:2024/03/07
小規模企業共済は20年未満で元本割れ?個人事業主の退職金準備は?
小規模企業共済は個人事業主や中小企業の経営者・役員の退職金づくりに適しています。また、掛金を全額所得控除できるなどメリットがあるが、20年未満で任意解約すると元本割れするなどのデメリットもあるので、上手に活用しましょう。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 小規模企業共済とは?
- 小規模企業共済について | 個人事業主の退職金制度
- 小規模企業共済のメリット
- 掛け金は加入後も増減でき、全額を所得控除可能
- 解約手当金(共済金)の受取りは一括・分割を選択できる
- 低金利の貸付制度を利用できる
- 小規模企業共済のデメリット
- 加入12か月未満は掛け捨て
- 加入期間20年未満での任意解約は元本割れする
- 受け取り時には税金が課される
- 小規模企業共済を元本割れせず受け取るには?
- 個人事業の廃業や会社の解散等なら元本割れしない
- 共済・保険のことはマネーキャリアで相談できます!
- 個人事業主が保険料での節税を可能にする方法とは?
- 法人化で生命保険料を経費にできる?
- 養老保険で従業員の退職金を準備しながら節税できる?
- まとめ
目次
小規模企業共済とは?
小規模企業共済について | 個人事業主の退職金制度
小規模企業共済は、中小企業や個人事業主の生活の安定などを目的にした制度です。
また、福利厚生の拡充や社会保障を充実させることも趣旨として掲げられています。
現に昭和40年から現在までに多くの中小企業経営者・個人事業主の退職金づくりや社会保障の拡充に貢献してきています。またそれと同時に、そこで働いている従業員の福利厚生をより手厚くでき生活を安定させることができる仕組みになっています。
その中で小規模企業共済は主に退職金づくりを手助けするための制度ではありますが、それだけではなく契約者が掛金を納めることによって所得控除を受けることができ節税につながったりもします。
また、将来共済金を受取る時も退職所得や一時所得など所得控除が大きい課税方法を選ぶことができますし、急な資金繰りに困ったときも小規模企業共済から貸付を受けることができます。
さらに、小規模企業共済と併せて法人保険も目的に合わせて加入することで退職金づくりとは違い、節税対策や事業継承の準備など幅広く対策ができるようになります。
以上のことから小規模企業共済は様々な角度から中小企業の経営者や個人事業主を支援しています。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済に加入するメリットは、
- 掛金が全額所得控除の対象にできる
- 将来の受取方法を一括・分割・一括 分割併用と選べる
- 貸付制度を利用できる
1つ目の掛金を全額所得控除にできるは、そのままの通り1年間の掛金を課税される所得金額から差し引くことができます。
これによって、みなさんが支払う所得税や住民税が安くなり節税しながら退職金づくりができます。
次に2つ目の受取方法が選べるは、将来、廃業や死亡・法人化による解約などの際に一括か分割または一括分割併用かを選ぶことができるのです。
これにより、受取時にかかってくる税金の種類が変わってくるのです。
どちらの計算が有利になるかは、受取られる共済金の金額や加入年数・受取理由などによって変わってくるので、事前に調べておかれることをおすすめします。
最後に3つ目は貸付制度を利用することができます。
小規模企業共済は利用している契約者に対しての貸付も行っています。万が一不測の事態が起きたとしても、貸付を利用することで資金繰りに困らないようにできます。
この後、さらに一つずつ詳しく見ていこうと思います。
是非ご覧ください。
掛け金は加入後も増減でき、全額を所得控除可能
小規模企業共済の掛金は、1,000~70,000円の範囲で500円ごとに設定できます。
解約手当金(共済金)の受取りは一括・分割を選択できる
皆さんは共済金の受取方法にパターンがあることはご存じでしょうか。
将来の共済金の受取方法は
- 一括受けとり
- 分割受けとり
- 一括・分割併用受けとり
の3つから選択できます。
それぞれの選べる条件を見ていこうと思います。
一括受けとり
どの共済金の種類でも受取方法として選ぶことができます。
分割受けとり
60歳以上で300万円以上の共済金を受けとる時に選択することができます。
一括・分割併用受けとり
60歳以上で330万円以上(一括30万円以上、分割300万円以上)の共済金を受けとる時に選択することができます。
どのパターンの受けとりがいいかはご自身のライフプランや受けとり時の資産状況に合わせて考えましょう。
低金利の貸付制度を利用できる
小規模企業共済の加入者は低金利の貸付を利用することができます。
詳しくはこちらの小規模企業共済の貸付制度に関する記事をご覧ください。
種類と利率を一覧にすると、
貸付種類 | 利率(年利) |
---|---|
一般貸付け | 1.5% |
傷病災害時貸付け | 0.9% |
創業転業時・新規事業展開等貸付け | 0.9% |
福祉対応貸付け | 0.9% |
緊急経営安定貸付け | 0.9% |
事業承継貸付け | 0.9% |
廃業準備貸付け | 0.9% |
小規模企業共済のデメリット
小規模企業共済デメリットは、
- 掛金納付12ヶ月未満はお金が戻ってこない
- 加入20年未満で解約すると元本割れする
- 受取った時に課税される
の3つになります。
1つ目の掛金12ヶ月未満が掛け捨てになるのは、支払事由の「準共済金」と「解約手当金」が対象になります。これら共済金は一定月数の掛金が払い込まれていないと請求理由によっては支払いの対象になりませんので注意が必要です。
そして2つ目は、20年経たずに解約すると元本割れが発生してしまいます。
小規模企業共済は加入資格がある方は手頃な掛金で退職金づくりを始めることができる反面、解約時期や解約理由によっては元本割れが生じてしまいますので慎重に判断する必要があるでしょう。
最後に3つ目の共済金受取り時に税金が課税されます。
これは受取方法や契約者の年齢などによって課税の種類が異なってきます。
また、どの受取方法がご自身にとって一番有利な課税扱いになるのかを事前に調べておけば将来共済金を受取る時も安心して受取ることができるのではないでしょうか。
この後、さらに一つずつ詳しく見ていこうと思います。
是非ご覧ください。
加入12か月未満は掛け捨て
小規模企業共済の共済金を加入してから短い期間で請求する時は、まったくお金が返ってこないこともありますので注意したほうがいいでしょう。
共済金の種類と掛けていた期間の組み合わせによって全額掛け捨てになります。
掛けていた期間によって、
- 払込月数が6ヶ月未満
- 払込月数が12ヶ月未満
払込月数6ヶ月未満
加入から6ヶ月未満で共済金A・共済金Bに該当する理由で共済金を請求しても支払われませんので注意しましょう。
払込月数が12ヶ月未満
加入から12ヶ月未満で準共済金・解約手当金に該当する理由で共済金を請求しても支払われませんので注意しましょう。
小規模企業共済は加入から短期間での共済金請求は支払い対象外になっていますので注意しましょう。
加入期間20年未満での任意解約は元本割れする
共済金を掛けている途中20年(240ヶ月)未満で任意解約すると元本割れが発生します。元本割れを防ぐためにも途中で掛金を変更した時は特に注意しましょう。
請求理由が解約手当金をとして判断されるのは、
- 任意解約
- 機構解約(12か月以上掛金滞納)
- 個人事業を法人化し、加入資格はなくならなかったが解約をした時
の3つの場合になります。
これらの請求理由により小規模企業共済を解約する時は、掛金納付月数を確認してから手続きをしないと元本割れの可能性が高くなります。
急な資金繰りなどやむおえず解約しなければいけない時を除けば、掛金を減額したり、貸付制度を受けたりなど元本割れを回避する別の方法も検討されたほうがいいと思います。
詳しくは小規模企業共済の元本割れする場合について解説した記事をご覧ください。
受け取り時には税金が課される
共済金を受取る際は受取方法によって課税種類が変わることになります。
主に3つの課税扱いがあります。
- 退職所得
- 一時所得
- 公的年金等の雑所得
です。
退職所得
一般的な退職所得の計算は 800万円(40万円×20年)+70万円×(勤続年数-20年)で計算し、合計金額を受取金額から差し引くことができます。
一時所得
総受取金額-払い込み総額-特別控除額(50万円)×1/2で計算し、でてきた金額が課税される所得になります。
公的年金等の雑所得
65歳以上の方は、収入金額×割合(0.75~1.00)-(110~195.5万円)で計算します。計算方法からわかるように、所得控除が一番大きいのは退職所得になりますので、共済金を受取る時は退職所得に該当するように受け取ることでご自身が支払う税金をなるべく少なくすることができるでしょう。
小規模企業共済を元本割れせず受け取るには?
共済金種類 | 請求事由 |
---|---|
共済金A | 個人事業を廃業 共済契約者の死亡 |
共済金B | 老齢給付(65歳以上180か月以上掛金払い込み) |
準共済金 | 法人化し加入資格がなくなり解約 |
解約手当金 | 法人化し加入資格がなくなり解約 機構解約(12か月以上掛金滞納) 任意解約 |
となっています。
金額はほとんどの場合が共済金A>共済金B>準共済金>解約手当金と順番に減額され、20年未満での解約手当金手続きに関しては当然ながら元本割れしてしまい加入された方にとって損になります。
以上のことから、請求事由によって共済金の種類が決まり受取金額が元本割れするかしないかがわかります。
中小機構のホームページに詳しい計算方法があるので、元本割れが気になる方は一度シミュレーションされてみることをおすすめします。
個人事業の廃業や会社の解散等なら元本割れしない
共済金の請求事由は、20年未満で任意解約を選ばれると元本割れが発生しますが、共済金Aでの支払いに該当するのであれば20年未満で共済金を請求しても元本割れをせずに受け取ることができます。
それは共済金Aの請求事由は事業の廃業などが主な理由になり、小規模企業共済の特徴でもある事業主の救済の観点から廃業が理由の時は元本割れしないようなしくみになっているからです。
ただしこの廃業を理由として共済金を請求する時は、すべての事業を廃止し廃業を証明できるような書類の提出も求められます。これらは元本割れしない共済金Aを不正請求させないためです 。
以上のことから、もし事業の廃業や会社の解散で共済金を請求する時は事前に必要書類を調べておかれたほうがいいでしょう。
共済・保険のことはマネーキャリアで相談できます!
マネーキャリアでは保険のことやお金に関する悩みを無料で相談できます。
個人事業主が保険料での節税を可能にする方法とは?
個人事業主の方が節税をする方法としてどういった方法があるかご存じでしょうか。
- 個人事業主から法人化で節税
- 生命保険で退職金の準備と節税
の2つの方法があります。
一つ目は個人事業主から法人化することで、所得税や使える控除などが変わってきます。
また、その他にも退職金制度を導入できたり、経費として扱える項目が変わってきたりします。
こういったことからも、個人事業主が収益によっては法人化することで高い節税効果を受けることができるようになります。
二つ目は生命保険を用いて退職金づくりや節税をできる方法もあります。
一般的には万が一に備えて生命保険に加入されることが多いと思いますが、その場合は個人が生命保険料控除や入院時の給付金などを受けるメリットがあります。
法人や個人事業主が生命保険に加入した場合、契約形態などによっては節税効果を発揮することができます。
また、ただ単に退職金づくりだけを考えれば、貯金での積立などで退職金を作ることはできますが生命保険を活用することで2つの目的を同時に実現できるようになります。
法人化で生命保険料を経費にできる?
個人事業主が法人化し生命保険を活用すれば、保険料は会社が負担し会社が負担した保険料は一部経費として扱え、経理上損金に算入することができます。
また、生命保険の種類や契約形態などで損金に算入できる割合が変わってきますので、注意する必要があるでしょう。
さらに、併せて金融庁が発表する毎年の税制改正などをチェックしておく必要があると思います。
法人は生命保険料を損金算入していくことで、毎年の課税金額を繰り延べしていることになっています。
これによって毎年節税ができていますが、最後に満期保険金を受取ったり、解約返戻金を受け取った場合に雑収入として益金に上がり、今まで繰り延べていた法人税をすべて払うことになってしまわないように注意が必要なります。
詳しい法人保険による節税効果に関してはこちらの記事をご覧ください。
養老保険で従業員の退職金を準備しながら節税できる?
個人事業主の方の中には、「養老保険の保険料は経費として認められるのか?」と疑問に思われている方もいるのではないでしょうか?
個人事業主が損金算入を認められる契約形態は、
契約者 | 個人事業主 |
---|---|
被保険者 | 従業員 |
満期保険金受取人 | 個人事業主 |
死亡保険金受取人 | 従業員の遺族 |
となります。
この契約形態であれば、経理上保険料の1/2は損金が認められます。
さらに従業員全員の加入(普遍的加入)と福利厚生規定を作成しておくことで福利厚生目的と認められやすくなるでしょう。
詳しい養老保険の経理処理についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
ここまで小規模企業共済のメリット・デメリットなどを解説してきました。
この記事の中身は、
- 小規模企業共済は節税しながら退職金づくりができる
- 小規模企業共済を20年未満で解約するときは元本割れに注意する
- 個人事業主や法人も生命保険料を経費にして退職金づくりや節税ができる
となります。
小規模企業共済や法人保険などの制度を活用して上手に節税をしていきましょう。
中小企業の経営者や役員・個人事業主が加入する小規模企業共済をご存じでしょうか?
会社員のみなさんはあまり聞かれたことがないかもしれません。
逆に、会社の経営者・役員の方や個人事業主の方はこれから小規模企業共済を知って活用されることで様々な制度上の恩恵があるでしょう。
今回の記事は、
などについて解説しますので、最後までお読みください。
ほけんROOMでは、他にも法人保険に関する記事を多数掲載していますので、参考にされて下さい。